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お喋りも読書もここで、コーヒーと。?KAFFEEHAUS?ビルギットさんインタビュー?

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野川公園(東京外国語大学から徒歩約10分)のすぐ隣にある「KAFFEEHAUS(カフェハウス)」をご存じですか。東京外国語大学から足を伸ばして地域のお店を紹介するシリーズ「多磨から広がる#東京外大生おすすめレストラン」をスタートします。第1弾は、こちらの「KAFFEEHAUS」です。今回のTUFS Todayは、オーナーのビルギット(Ms. Birgit Zorb Serizawa)さんに、温かいカフェの空間についてインタビューしました。ビルギットさんは2020年6月に、本を自由に借りられてお喋りも楽しめるブックカフェを開店しました。どのようにコロナ禍と向き合い、今があるのか。ビルギットさんの空間作りの工夫について伺いました。

インタビュー取材担当

  • 言語文化学部ポーランド語2年?山口紗和(やまぐちさわ)さん
  • 国際社会学部ラテンアメリカ地域/ポルトガル語4年?中矢温(なかやのどか)さん
    (以上、広報マネジメント?オフィス学生取材班)

——こんにちは。今日の取材をとても楽しみにしてきました。私は英字新聞「Japan Times」に掲載されたビルギットさんのインタビュー記事を拝読したのですが、その記事によると、2006年から府中市紅葉丘文化センターで本の貸出を、コミュニティサービスとして、主催していらっしゃったとのことです。そして現在は自分のカフェで本を貸していらっしゃいます。記事にカフェのことは書いてありませんでしたが、このカフェのオープンはいつだったのでしょうか?

このお店を見つけてくれてありがとうございます。私は15年前から本とかかわってきて、 「Book Ideas」という名前の、外国語の本を貸し出すボランティアを続けてきました。しかし文化センターに本を置いておくことができず、本のための家を探し、貸し出すことに決めました。「KAFFEEHAUS」のコンセプトも、この「Book Ideas」から取ったものです。このカフェは昨年の6月に開店しました。本やおしゃべりは、コーヒーやクッキーと相性がよいと思い、カフェも始めることにしました。当初は5月に開店予定でしたが、緊急事態宣言で少し遅れてしまったんです。

——そうなんですね。ではまさにコロナ禍での開店だったかと思います。今までどんな風に営業をされてきましたか。

今でも難しいことだらけです。カフェの経営も学びながらですし、来てくれる方の健康に万一のことが起きないかも心配です。売り上げのためにやっているわけではないとはいっても、難しいことはたくさんあります……。ただ、お客さんのほとんどは日本人ですが、多くのお客さんは、私が「グッドアフタヌーン!」と声をかけると、英語にスイッチを切り替えてくれて驚きました。あとは、優しい別のお客さんが通訳して私たちを助けてくれることもあります。私は簡単な日本語ならわかりますし、言語の壁は意外と大丈夫でした。ですがやっぱりマスクをしているお客さんの顔は、なかなか覚えられませんね。私が「初めまして」と言ったら、「前にも来たよ!」なんて返されたこともあるんです。今日だってあなたが以前に来てくれたのと気づくのには、時間がかかってしまいました……。

——マスクをつけているだけで、コミュニケーションには壁が生まれますよね。改めて来てみて、カフェの内装が素敵だなと思うのですが、どんな点にこだわりましたか?

まずは、バリアフリーにしたことです。スロープを設けて、お手洗いは広くして、車椅子の方にも来ていただきやすいようにしました。障害のある子どもたちの先生をしていた経験が、設計に生きたんだと思います。あと一階には柱をないように設計したのですが、その代わり冷暖房の器具が部屋を間仕切りしています。庭のサボテンについては、完全に夫の趣味です(笑)。

——なるほど、素敵な工夫がたくさんありますね。なかでも壁一面の本に目が惹かれます。現在カフェに本は何冊くらいありますか。どうやって増えていきましたか?

まず私が世界中でこつこつ集めてきたものがありますね。例えばジンバブエとか……。あとは寄贈していただいた本もあります。私の娘はここにある本をたくさん読んで育ちましたね。他にはインターナショナルスクールや教会で行われる、古本の100円均一で買えるので、非常に助かっています。ここにある本のなかには使用感のある本もありますが、とても希少な本です。また、お客さん同士がお互いのことを知らなくても、本をきっかけに話が弾むなんてこともあって、それは私が心から望んでいたことです。つまりは一冊一冊の本にここまでに来る物語があるんです。

—––英語以外にもいろいろな言語の本があって、東京外大生も楽しく勉強できそうです。本を借りたいときはどんな風に借りることができますか。手順を簡単に教えてください。

本の表紙裏に手作りの貸出カードがあります。最初は名前等を登録してもらいますが、次回以降は貸出カードに、名前と借りた日付を書けば大丈夫です。もしよければ、お店のイベントや営業日についてお知らせするメーリングリストに追加させてもらいます。本は借りたいだけ借りてもらって大丈夫です、あなたのバッグが壊れない程度にね(笑)。返却は、一か月以内を目安としています。返すときは入口横の青いBOXに入れてもらえたら、私に声掛けをしたり店内に入ったりする必要はないですからね。

——ありがとうございます。お店でイベントをされているのですね。例えばどんなものがありますか?

例えば今週日曜日(2021/11/28)に音楽のイベントがありますよ。今までにおこなったものでいうと、親子で楽しめる陶器や紙工作のイベントをしたことがあります。子ども向けにおこなうイベントもあり、たまにする絵本の読み聞かせは人気ですね。イベントは、英語で行いますが、必要な場合日本語の翻訳もあります。なぜなら日本人家族もインターナショナルファミリーも一緒に参加するからです。あとはスピーカーを呼んで語ってもらうイベントをしたこともあります。禅がテーマのこともありました。でも例えば「クリスマスについて話しましょう」といっても、アメリカのクリスマスなのか、日本か、ロシア、ドイツかといったように、地域によって文化は異なります。スピーカーの人が話したいことと、お客さんが聞きたいことは必ずしも一致しません。ディスカッションサークルでは、月に1度イベントを開催しています。死や地球温暖化といった様々なトピックがあります。私はテーマについて事前に資料を揃え、参加者に送ります。準備する私の時間も限りがありますし、イベントを取り仕切るのには大変なことも多いです。やっぱり今の時期だと、ディスタンスへの配慮も必要ですしね。イベントの開催は大好きです。

——なるほど、ビルギットさん自身の準備の負担や、スピーカーの興味関心、そしてその日に来るお客さんの満足のすべてのバランスをとるのは難しいことですね。

バランスといえば、カフェの雰囲気のバランスを取るのも難しいものです。私はそれぞれの人が思うままにここで時間を過ごしてほしいのですが、それらすべてが調和するのは難しいこともあります。例えばおしゃべりをしたい人と、静かに勉強をしたい人。周りの目を気にすることなく赤ちゃんを遊ばせたいお母さんと、赤ちゃんの泣き声が苦手な人。こういった人が同じ空間で快適に過ごすのは、どうしても難しいですよね。あるとき学生たちが静かに勉強していたところに、別のお客さんが来て大声でお喋りを始めました。そしたら彼らはさっとイヤホンをつけたんです。私、なんだか少し複雑な気持ちになっちゃって……。お客さん一人ひとりの快適は時に共存が難しく、その時々で正解は変わります。

——なるほど、私みたいに、誰かが喋っているくらいが集中できる人もいますし、きっと大丈夫ですよ(笑)! さて、お店に来たいと思うお客さんのなかには、英語に苦手意識を持っている人もいるかと思います。そういった方を含めて、これからお店に来てくれる人にメッセージを最後にいただけますでしょうか。

英語を話さなくともメニューを指さして注文することもできますし、私と無理にコミュニケーションを取ることもないですよ。自分が持ってきた本や、ここにある本を読んでもいいし、お店にあるボードゲームをしてもいいんです。その時その場にいる他のお客さんによっては、思いがけず日本語や英語を混ぜながら話すなんてこともあるかもしれません。私も心地よい空間を生み出すのに手探り中の身ではありますが、ここで生まれる新しいコミュニティや出会いがきっとありますよ。

インタビュー後記
ビルギットさんとカフェハウスの魅力が少しでも伝わりましたでしょうか? 東京外大生の多くは多磨駅からそのまま帰ることが多いと思うのですが、野川公園に散歩に行った際はぜひお立ち寄りください。お庭のサボテンやテラス席など今回紹介できなかった魅力もたくさんあります。取材後に私は他のお客さんとおしゃべりしていたのですが、興味のある学問分野が同じで、連絡先まで交換することになって、新たな友人ができました。この温かいカフェの雰囲気が結んでくれた縁のように思います。
取材担当:中矢温(国際社会学部ラテンアメリカ地域/ポルトガル語4年)

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