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地域に飛び出す!―府中市と協働「外国につながる子ども」学習支援

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本学の学生は、地元府中のまちで、さまざまなボランティア活動を行っています。障害者支援施設でのイベント出演、本学に隣接するけやきの森学園での支援活動、地元のおじいちゃんおばあちゃんのおしゃべりサロンへの参加???。そして、一番たくさんの学生が参加しているのが、府中市と協働で行っている「外国につながる子どもへの学習支援」です。今回のTUFS Todayは、地元府中での、この取組をご紹介します。

外国につながる子どもとは?

国境を越えてたくさんの人々が移動する時代になりました。その中でも親の仕事の都合で日本にやってきたり、国際結婚によって生まれたりした子どものことを「外国につながる子ども」と本学?ボランティア活動スペースでは呼んでいます。本学が立地する府中市でも「外国につながる子ども」たちが増えてきています。家庭の中で話している言語と学校や地域で使っている言語が異なる子どもにとって、日本語を学ぶ機会はまだ十分とは言えません。生活の中で使うことばはすぐに身につけられても、学校の授業を理解し考えるためのことばを習得するには何年もかかると言われています。

府中市が行っている外国人児童生徒および外国につながる子ども対象の支援のうち、教育委員会主催の日本語適応指導教室(活動名?ちゅうサポ)と府中国際交流サロン児童学習支援の2か所で本学の学生が活動しています。

府中国際交流サロン児童学習支援

府中国際交流サロン(以下サロン)での児童学習支援が始まったのは、2005年2月。それ以来ずっと、本学学生が教室に通ってくる子どもの支援をしてきました。2014年10月現在、約20名の学生が同じくらいの人数の子どもの支援をしています。子どもたちのルーツは中国が最も多く、韓国、フィリピン、ルーマニアの子どもたちも在籍しています。サロンには市の職員も常駐していて、支援希望の子どもと保護者の面談や連絡を一手に引き受けてくださっています。学生たちにとってとても頼もしい存在です。また、サロンの日本語学習会ボランティアのみなさんも、いつも暖かく見守ってくださっています。地域のみなさんに支えられて、学生たちが活動する場が用意されています。

サロンで活動している学生にインタビューをしました

——子どもたちのサロンでの過ごし方を教えてください。

毎週金曜日の5時になると、学校から帰ってきた子どもたちが教室に集まってきます。市内全域から通ってくるため、教室に到着する時間はまちまちです。教室では、担当の学生とマンツーマンで学習しています。6時になると、低学年の子どもが学生と一緒に遊ぶ時間としています。ただ遊ぶのではなく、かるたをしたり、しりとりをしたり、遊びの中でも日本語を使う工夫をしています。

——どんなことを学習していますか。

学習内容に対するニーズは子どもによって違います。日本語のひらがなから学習を始める子もいれば、数学、理科や社会の勉強をしている子もいます。家でお父さんやお母さんに勉強を教えてもらうことが難しいので、学校の宿題を持ってくる子どもも多いです。

——日本語以外の教科を学んでいる子どももいるのですね。

あいさつなどの日常会話ができても、学校の教科学習の理解が進まない子どももいます。具体的な場面が見えにくい、算数や数学の文章題などは、計算はできても文章を理解して解くのは難しいそうです。ある子どもが「理科がわからないのではなく、日本語がわからない」と話していたことがあります。そのつらい思いを聞くのも、私たち学生の役割です。

——イベントはありますか?

月に1回、誕生日月の子どもに対して、誕生日カードを贈っています。また、年に何度か、お楽しみ会を開いています。学生が企画し、保護者に案内状を送って、子どもたちの様子を見てもらっています。

——学習支援のコツはなんですか?

『目線を合わせて向き合う』ことを心がけています。まずは子どもの思いを受け止めた上で、さあどうしようと考えるようにしています。

問い合わせ先 府中国際交流サロン 042-352-4178

府中市教育委員会日本語適応指導教室

日本語適応指導教室は、2012年にできた、まだ新しい教室です。府中市教育委員会の先生が、週1回2時間、子どもたちが日本の学校に慣れることを目的に、日本語を教えています。学生は子どもの隣に座って、日本語学習のお手伝いをしています。教室で使われている言語は日本語です。

2014年度の教室では、初めての外国語を学び始めたばかりの本学1年生と、日本に来たばかりの子どもが一緒に学んでいます。

本学学生の大学生活は、今まで聞いたこともない言語をシャワーのように浴びるところから始まります。ある学生は「涙が出そうだった」と話してくれました。言葉の壁を超える、そんなチャレンジをしている本学学生たちだからこそ、全くわからない日本語が飛び交っている教室にいる子どもの気持ちがわかるのかもしれません。日本に来て半年以内の子どもが対象となっている教室なので、最初は全くコミュニケーションを取れなかった子どももいますが、一歩一歩仲良しになっていきました。なかには、教室が始まる前に、教室の外で待っていてくれた子もいたとか。本当のお兄さん、お姉さんになったような気がしたそうです。

問い合わせ先 府中市教育委員会教育部指導室(学校を通して申し込みます)

学習支援について学ぶ機会

本学の「ボランティア活動スペース」では、次のような学習支援について考える機会をつくっています。いずれも、学生が自主的に学ぶ活動です。

学習支援フォローアップ講座

2014年度は府中市日本語指導助手の方にお越しいただき、全く日本語を話せない子どもへの、絵本を利用した支援の方法について学びました。

学習支援研修

9月30日に開催した学習支援研修では、本学の教員と学生を講師として、次のことを学びました。

  • 外国につながる子どもの言語習得
  • 外国につながる子どもが置かれている状況と背景
  • 私も外国につながる子どもだった

座談会(月1回)支援の方法について学生どうしで学び合います。

毎回の教室終了後は、どちらの教室でも「ふりかえり」をしています。教室に関わる全員の学生が、全員の子どもの様子を共有するように心がけています。それはより多くの目で子どもを見合って支援していきたいと考えているからです。


本学の「外国につながる子どもの学習支援」は、子どもと学生の1対1の関係に終わらず、地域に住む人や府中市の職員、本学教員、子どもたちの保護者、さらには学生同士、さまざまな人々とのつながりを大切にしながら、たくさんの人に支えられて活動しています。学習支援は、一方的に学生が日本語を教える場ではなく、学生も子どもとともに成長する場でもあるのです。

府中国際交流サロンの職員の方々。いつも、ご指導ありがとうございます!

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